被告人の陳述


元イシディンナ師長こと林泰男被告
1998年6月26日


一 初めに
 私が起訴された3つの事件に関与したことは、概ね起訴状のとおり間違いありません。

 当時私はオウム真理教の大乗の教えを信じて出家し、多くの出家修業者と共に教団の施設内で集団生活をしていましたが、教団内では教祖の麻原は絶対的な存在であり、その命令には逆らえないという精神状態にありました。

 起訴された事件で直接私に指示を与えたのは、松本サリン事件では村井でした。地下鉄サリン事件では村井と井上から指示を受けました。新宿青酸ガス事件では井上の指示でしたが、いずれももともとは麻原が命令を下したものとわかっていましたので、その指示には逆らえませんでした。

 しかしながら、どのような理由があったにせよ、何の罪もないたくさんの方に取り返しのつかない被害を負わせ、社会を混乱に陥れたことは、私自身の重大な罪です。自分の愚かな行為を後海し、反省しています。

 私は犯行を犯した後、被害者の苦しみも考えず、逮捕されれば極刑を免れないという恐怖から身勝手な逃亡をしていましたが、一年半に及ぶ逃亡中も自分の犯した罪の重さに心をさいなまれていました。そんな心の苦しみから、手作りの仏壇を作り、毎日手を合わせてこの事件で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被害者やご遺族の方々に心からお詫びをし続けてきました。この気持ちは今でも変わりません。本当に申し訳ありませんでした。

 私は平成7年7月ころ、教団との関係は断ち切ろうと考えていましたが、その後テレビで教団から除名されたと聞きました。脱会届は提出していませんが、現在は教団を脱会しているつもりです。

二 地下鉄サリン事件について
1 私が宗教法人オウム真理教に所属していたことは認めます。

2 私が、オウム真理教の教団代表者であった麻原彰晃こと松本智津夫並びに教団に所属していた故村井秀夫ら多数の者と共謀のうえ、地下鉄霞ケ関駅に停車する営団地下鉄日比谷線、千代田線、丸ノ内線の各電車内などにサリ
ンを発散させて不持定多数の乗客等を殺害しようと企てたことは認めます。
 ただし、共謀した者の中に土谷正実がいたかどうかははっきりとはわかりません。しかし、その事実も争いません。
3 私はこの事件に使われたサリンの生成には関与していません。しかし、そのサリンがオウム真理教の教団関係者によって起訴状に書いてある教団の施設内で生成された事実は争いません。

4 公訴事実第一の事実は認めます。

5 公訴事実第二から第五の事実も争いません。

三 松本サリン事件について
1 私が宗教法人オウム真理教に所属していたことは認めます。

2 右教団の代表者であった麻原彰晃こと松本智津夫並びに同教団に所属していた中川智正ら多数の者が共謀のうえ、起訴状記載のとおり殺人、殺人未遂の犯行に及んだ事実は争いません。

3 私が平成6年6月20日ころから同月27日までの間、起訴状記載の教団施設などにおいて、渡部和実などと共に加熱式噴霧器設置車両一台を製作するなどした事実は認めます。

4 しかし、右車両を製作するなどした際、同車両が前記殺人、殺人未遂の犯行に用いられるものであることを知っていたという事実はありません。

四 新宿青酸ガス事件について 事実はすべて認めます。 以上


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