資 料  1〜6


資 料 6 通 告 書

ー窓口が「明らかな危険性はないとして破防法に反対している」という部分のみを載せた雑誌ヴァジラヤーナサッチャにつき、出した書面。広末君から返事ないままです。最近のジャーナリストら相手までの増長をみるに、なんとも、その御都合主義には辟易します。

通 告 書

□貴殿発行の雑誌ヴァジラヤーナ・サッチャ本年七月二五日付第一二号の一五七頁に、サンデー毎日から転載されている当職の破壊活動防止法のオウム真理教についての団体適用に関する意見につき、次のとおり要請する。

□右をすべて回収のうえ削除するか、次のとおりの見解を付けて、謝罪のうえ同誌次号又は直近の一般向け雑誌に掲載し直すようここに要求する。

□「滝本太郎弁護士は、事実を踏まえて、オウム真理教が宗教法人上の解散命令をすみやから発せられるべき団体であること、一連の毒ガス事件及び銃器密造事件につき麻原彰晃こと松本智津夫及び関与した幹部らにつき少なくとも内乱予備罪が適用されるべきこと、オウム真理教が直ちに自主的に解散すべきとし、その上で破壊活動防止法につき、次のとおり述べている。」

□すなわち、当職は、オウム真理教が麻原彰晃こと松本智津夫の指導のもとでそのカルト集団たる特質を利用し組織的に極悪非道の行為をしてきたことを調査し、告発糾弾している立場の者であることご承知の通りであるところ、右破防法についての意見は前記のとおりの前提として表現されるべき見解なくしては、著しく誤解を招くものであり、これを欠いての転載は不正確極まりないものという外なく、もとより右は自らの情報をコントロールするという当職のプライバシー権を著しく侵害するものである。

□よって、右のとおり通告する。前記のごとき転載は「ご都合主義」として恥ずべきものであって、組織としての責任をわきまえないものという外なく、同時にかかる「妄語・綺語」を弄して読者を「迷妄」に導くは、到底許しえないことを認識されたい。

□1995年8月28日

〒242神奈川県大和市中央2丁目1番15号パークロード大和ビル2階
電話0642−63−0130 弁護士 滝本太郎

 

〒107 東京都港区南青山7−5−12マハーポーシャビル
宗教法人オウム真理教 御中
〒154 世田谷区世田谷2−8−17
株式会社 オウム 発行者 広末晃敏 殿


資料5 上申書ー「前例のない事件に対しては前例のない体制で」

上 申 書 −−平成7年3月13日

弁 護 士 滝 本 太 郎

□最 高 検 察 庁 検 事 総 長 御中
□警 察 庁 長 官 御庁

上 申 の 趣 旨

□宗教法人オウム真理教の構成員による各種違法行為につき、速やかに万全の体制を整えられたうえ、早急に強制捜査されるよう上申します。

上 申 の 理 由

一、本来であれば、本書は、担当の地検、警察署等を通じてなすべきものと思いますが、全体情勢を報告すべき所が何処にあるか判然としないために、かかる宛名となる失礼を、まずお詫び申し上げます。

ニ、当職は、昭和58年4月登録の横浜弁護士会所属の弁護士であり、平成元年11月中旬からオウム真理教被害対策弁護団に所属しています。当職の活動は、右団体が周辺住民に与えている加害についての事件、「極限の布施」等にからむ諸事件、また子どもらが表記団体に「出家」し所在不明になった場合等の相談の外、平成5年夏頃からは出家直前また「挫折」等して戻った場合のカウンセリング等であります。カウンセリングの実施は、20回を超えました。

□当職は、既に昨年11月2日付にて、御庁等に「オウム真理教集団自殺虐殺の危険性について」と題する書面を提出しており、またその活動の各一部は、甲府地検、熊本地検、神奈川県警、山梨県警及び警視庁等から、お聞き及びのことがあろうかとも思います。

三、さて、当職が把握している限りでも、諸般の情報を総合しますと、既にオウム真理教の内部では中村徹君の事件に見られるようなリンチが続発しているのではないか、と危惧されます。

□そして、麻原彰晃こと松本智津夫は、まさに「国家権力」と戦争をしたがっており、仮にナイフや銃のみならずサリンガスまで持っているとするならば、集団自殺・虐殺は勿論、対外的な各地での一般人を被害者とする事件も心配されます。

□当職としては、昨年の集団自殺に言及した説法を、この1月7日、オウム真理教が放送で改めて流したこと、並びに同封のビラ等から現実に心配しているものです。

□昨年の説法では、「(毒ガスの)次はひょっとして原爆かもしれないね。」などと言っており、まさかとは思いますが、自ら「ハルマゲドン」なる事態を迎えさせようとするとき、そして従来から想像以上のことをしてきたとしか思えないことにかんがみるとき、これさえも彼の発想からするならばあり得なくはなく一抹の不安を覚えます。

□いずれにせよ、サリンガスを持っていれば勿論、そうでなくとも集団自殺・虐殺の危険性は現に存在し、いままでの刑事事件からしても、今後の治安事件としても、とても看過できないものです。

四、ところで、別紙「留意点」に記載したとおり、坂本弁護士一家失踪事件を別としてでも既に各地で事件が頻発し、捜査も相当に進んでいる筈ですから、相当程度の者まで逮捕し、全体を捜索できるはずの状況だろうと思います。

□松本智津夫にしても、甲府地検に告訴済みの名誉毀損事件としては勿論、薬物を使った儀式では同人が信者にこれを渡しているのですから、逮捕することもあながち不可能ではない筈だと思います。

□集団自殺・虐殺そして対外的な暴力を起こさせないままに、もとよりサリンガスなど持っていても使わせないで全体を終息させるためには、松本智津夫をまず逮捕すること、それも多くの信者の居ない所で、突然に逮捕し、直ちに全体の被疑者の逮捕、捜索をすることが重要だと思いますが、これも不可能ではない訳です。

□逆に、警察や場合によっては自衛隊まで要請して毒ガスマスクでもして強制捜査でもしたならば、それこそ「毒ガスによる国家権力の弾圧」と信者は思い、少なくとも集団自殺・虐殺は避けられず、警察官らの安全上も心配です。

五、かといって、このまま置いておけば、内部でのリンチのみならず、外部に対する攻撃性を増していること明らかですから、どうなっていくか想像もつきません。ましてそれがサリンガスの使用による場合の惨劇は、想像に余りあります。

□以上の次第ですから、上申の趣旨記載のとおり、速やかに万全の体制をとって、一刻も早く、全体を終息させるよう上申します。

六、同封のテープ等は、当職らとしてでき得る最大限の工夫であり、その時点において少しでも多くの信者を救う一方途だとは思っていますので、参考までにお送りするものです。ご笑納ください。

□なお、中村徹君らの事件、前記各書面や本書面の提出等については他の弁護士らにも一切他言していないことを申し添えます。

七、繰り返しになりますが、サリンをもっているか否かにかかわらず、アメリカ合衆国で起こったバグワンとかいうカルト宗教の末期状態を思い起こして頂き、前例のない事件に対しては前例のない体制をとっていただきたく、上申するものです。

付 属 書 類

一、「オウム真理教集団自殺虐殺の危険性について」写し 1994年11月2日付
二、「心覚え」 写し1995年2月12日付
三、「オウム真理教関係で把握したいこと、留意点」写し 1995年3月6日付
四、オウム真理教(集団・個別)自殺・虐殺防止用テープおよびテープ原稿
五、説法 写し1994年3月11日説法
六、ビラ 写しーーーー (懐かしい資料の中の「最後通告T」というビラです)


資料4 オウム真理教集団自殺虐殺の危険性について

(プライバシー保護のため一部名前を伏せています)

□1994年11月2日

オウム真理教被害対策弁護団 弁 護 士 滝 本 太 郎

法務省 刑事局 御中
甲府地方検察庁 御中
警 察 庁 御中
山梨県警察本部 御中
熊本県警察本部 御中
神奈川県警察本部 御中

□上記の件について、あくまで個人的見解であって勿論かかることがなければ良いにこしたことはないのですが、この段階に至り、相当程度の不安を覚えますので、関係各機関においてご連絡・協議のうえ、十分に監視等の配慮をして頂けますよう、ここに上申します。

□なお、各事件は、各警察署等で捜査を開始しているものかと思いますが、同じ捜査ないし警備の機関であると思料し、上申するものです。

第1 当職の立場

□当職は、昭和58年4月登録の横浜弁護士会所属の弁護士であり、1989年11月からオウム真理教被害対策弁護団に所属しています。

□当職の活動は、表記団体が周辺住民に与えている加害についての事件「極限の布施」等にからむ諸事件、また子どもらが表記団体に「出家」し所在不明になった場合等の相談のほか、1993年頃からは出家直前また挫折等して戻った場合のカウンセリング等であります。カウンセリングの実施は、この一年余の間20件前後なります。

第2表記団体のもともとの特質について。

□別紙のとおり、まさに狂信的特質をもち、教祖の言うことであれば何でもするという特質を持ち、各信者は厭世感を強くし「輪廻転生の苦痛」なるものからの脱却を希望しています。

第3現段階において、集団自殺等の危険性を感じる理由について。

□「イニシエーション」と称する儀式において、この7月頃以降、薬物を使用し始めたとしか思えない状況となっていること。

□もともと表記団体は、教祖麻原彰晃こと松本智津夫の血を飲む儀式も過去にあり、また自己暗示を利用した秘儀をしていたところ、より効果ある手段として、この1月以降「PSIーパーフェクトサーベイション」と称する教祖と同じ脳波にするなどという電圧が10ボルト以下程度の電流を流す帽子様のものを被るようになりました。在家の者は100万円コース、1000万円コースがあり一週間程度のものですが、出家者は修行のみらず自動車運転等の作業中も継続してつけています。

□しかるに、この6月頃以降は、「黄色の粘性の液体」を飲んで速やかに意識を失ってしまう「キリストのイニシエーション」なるもの、更に点滴を施し財産や男女関係等のすべてを告白し、出家等への操作をされる「バルドーの悟りイニシエーション」なるものが実施されています。これは複数の、これを受けてきた者の供述のみならず、これを実施してきた看護婦資格をもつ者からの供述で明らかになってきています。施術者は、「治療省(旧AHI−アストラルホスピタルインスティチュート)」なる医師・看護婦資格をもつもの及び「法皇官房」なる教祖の側近のうち比較的若年者であるということです。

□また、薬剤の影響で判断能力不足のまま45度〜47度の程度を超えた湯に信者をいれることも行われています。

□かかる状況は、カルト宗教の末期症状であるというべきものです。

2死亡事件、特に教祖自ら指示した犯罪事実が発生した模様であること。

□前記のとおりの各供述からは、前記2つの「イニシエーション」中、相当程度の者が錯乱状態に陥り、いくつかの死亡事故ないし障害を残した事故があったとも思われます。

□また、教祖自ら「カルマ(業)を落せ」と指示して50度の熱湯に出家者1名を入れて、死亡ないしそれに近い状態が生じた模様でもあります。これらについて、教祖は「ポアした」として魂が上位の世界に行ったと称しているようです。

□なお、94年春以降、上九一色村の表記団体の責任者までしていたクラ師こと○○がいなくなっており、内部では脱退扱いとしているようですが、未だ所在が明らかでないようです。

3その他違法行為がひどくなり、また刃物の作成をしていること。

□本年9月、山梨県西八代郡上九一色村富士ケ嶺の地域では、相次いで表記団体に積極的に反対し、あるいは出家した家族等及び当職等と連絡をとってきた住民ら及び公民館等から盗聴器が発見されました。その直接証拠如何は知りませんが、状況証拠はまさに表記団体が犯人であることを指しています。これ以前の91年8月には茨城県○○市の表記団体に多額の布施をして出家し戻った者の居所から、また93年12月にはカウンセリング活動中の関係人の東京○○市内の民家からそれぞれ盗聴器が発見されています。これは、かかる違法行為をためらいなくする、その程度が著しく悪質になってきたことを示すものであります。

□また、本年8月には、山梨県南巨摩郡富沢町所在の表記団体の施設から、刃渡り9センチメートル程度ですが、ナイフを製造するために新規に研磨機を購入しようとしていた事実が確認されています。同社によれば現状ベルトサンダーや中古機で研磨していると聞いているとのことでした。かかる刃物を使ったイニシエーションなど従前はありませんでしたから、単に商品として出荷するためのものであることが確認されれば格別、そうでなければ出家者らが他害ないし自害するために使用される危険性も高いものであります。

4 1ないし3の事実が、次第に判明してきており、それを表記団体としてもわかってきていること。

□上記の各事実は、脱退者ないし脱走者ら、また表記団体から取り引きを申し込まれた会社等から得た情報ですが、脱退者については当職らから書面で通告し、そこでは例えば「黄色い粘性の液体」等の指摘もしています。そして前記看護婦資格を持つ者が脱走してきたのがこの10月26日夜です。

□これらは、表記団体にとって痛打となるものであり、強制捜査を予想して証拠の隠滅をしてみても限度があり、明らかとなったときの衝撃は大きいものであろうと思われます。

5教義において、自己及び他への攻撃性が高まっており、また従来では考えられなかったホーリーネイムの大廉売が始まったこと。

□93年10月以降、教祖は「狂気の救済者」になれと説法しており、従来のマハーヤーナ(大乗仏教)よりもヴァジラヤーナ(金剛?)を強調し、具体的には「目的のためには手段を選ばない」と公言しています。例えば、マインドコントロールの手法として、繰り返し見解や決意を述べる「決意如意足」なるものがありますが、ついに「目的のためには手段を選ばないぞ」を繰り返し述べるものが出現しています。

□また、信者らは、最初の段階と言われる「ラージャヨーガ」の成就によりホーリーネイム(宗教上の別名)をもらうことを憧れとし出家までしてきたものですが、この10月22日以降、「成就への趣旨」が前記「バルドーの悟りのイニシエーション」で認められれば、ホーリーネイムほ授与されるということになりました。しかも右秘儀は廉価ないし無料ということです。これは右秘儀をなんとか受けさせようというものですと同時に、ホーリーネイムの大廉売であって、教義的にも矛盾を多くしているものであります。

6 財政の逼迫

□収入面では、出家者はますます若者の比率が多くなっている模様で、「極限の布施」としてもさほどの布施ができていないようです。そこで、宮崎県小林署で扱いの○○○さんの事件(後に宮崎市資産家拉致事件といわれた)、千葉県木更津署で扱いの○○さんの事件で判明するように、表記団体の財政活動は信者のみならずその家族らからも違法に集金しようとまでするようになっています。そして重要なことには、かかる違法行為をする割には注意力にかけるようになってきたという外なく、相当の焦りが感じられます。

□近時マハーポーシャグループとして、台湾製パソコンの販売、宝石の販売又はクレジット詐欺、ラーメン店、焼肉弁当店、スーパーM24などが稼動していますが、その給与は多く布施に移動するところ、そもそも各店舗が繁盛している様子はなく、その他経費を考えると表記団体の運営に寄与しているとは思えないものであります。

□また本年、有限会社ぶーれーめん、株式会社アンブロシア等を設立登記しましたが、未だその目的であるパイナップルの加工販売等ができていない模様であります。

□なお、この数年は、従前言っていた「全財産」であれば価値は同じという論法ではなく、多額の布施をできる者はいままでの徳が高かったのだとし、特別扱いを当然のすることともしています。

□一方、表記団体の出家者に支給される「業財」についても過去は1か月3万円ということもあったようですが、昨年には出家して半年は5千円、後に1万円に、本年はそれも支給されないことがあるようになっているようです。これはなるべく使わないで返還することが「徳」を積むことなっているものではありますが、あきらかに財政の逼迫を示すものです。

□なお、前記PSIでは20億円を集めたということを「真理科学研究所」の元課長なるものが述べており、熊本県波野村との金銭和解9億3000万円を得られるとしても、支部の増設、人員の増加からして近時は赤字を重ねているのではないかと思われます。

第4 結語

□以上のとおり、カルト宗教たる表記団体は、そろそろ末期症状を迎えたと思われる状況になったという外なく、内部でも傷害・殺人行為が始まったとすれば、各種違法行為が判明するに従い、組織として自暴自棄の度合いを高めていくことが十分に予想されます。

□問題は、教祖麻原彰晃こと松本智津夫の性格ですが、その生育環境とこれまでしてきた行為からすると、ある意味での経済合理性を考えてきた時代から、自己に忠実な組織を造る喜びに飽き、その限度が来たときには崩壊させることの喜び、歴史に名を残す喜びを、意識的又は無意識的に追求するおそれがあろうと思われます。裏で個人的財産を蓄えて崩壊後のぜいたくな生活を企図しているとも思えない点、他のいくつかのカルト宗教と異なり従来から自らもさほどのぜいたくをしていない点からして、逆にこの危険性が高いとも言えます。

□一方、信者らは同人を「尊師」「最終解脱者」としてあがめ、その直接ないし間接の指示により絶対的な服従行動をしています。カウンセリング活動で実感していることですが、「人を殺してでも」程度の気持ちは(それにより多くの魂を救える以上)多くの者が持っています。

□危険がいっそう高まる時期は、今後、なんらかの「重大予言」とかを述べる時期とか「宗教弾圧」とかを改めて主張する時期かとも思いますが、既にカルト宗教としても末期症状を迎えていると思われることから、継続して注意する必要があり、かかる事態が起こったときに被害をなるべくちいさくするために、各事件については厳重かつ迅速な捜査をされるようお願い申し上げます。

□以上から、頭書記載のとおり上申します。


資料3 「書類送付書」江川紹子さん襲撃について 1994年9月21日

(プライバシー保護のため一部名前を伏せています)

□□1994年9月21日

オウム真理教被害対策弁護団弁護士 滝 本 太 郎

神奈川県南警察署 防犯課 御中
神奈川県磯子警察署 坂本弁護士一家失踪事件捜査本部 御中

□前略、9月20日未明、何者かがフリーライター江川紹子さん宅を襲い、刺激臭のあるガスを散布したとのことでしたので、これに関連すると思われる資料をとり急ぎ送付します。

□オウム真理教では、この3月頃から、麻原彰晃らが毒ガス攻撃を受けているとし、その対応のために支部道場では生石灰をまいたり、上九一色村を初めとする各施設では、自家製の空気清浄器をつけたりして、信者の被害者意識を高めようとしています。8月には、水らも毒がはいっているとしてミネラルウォーターを支給するなどもしています。

□逆に、オウム真理教がなんらかのガスを作って、それをまいたりして、信者の引き締めにかかっているとの可能性も、全くなくはないと思います。

□すなわち、過去にもシクロヘキサンを積んでの事故、塩酸を持ってオーストラリアにいくなどの事態もあり、昨年の東京亀戸の悪臭騒動、本年の上九一色村での悪臭騒動のなか、カセイソーダ、濃硫酸も発見されているからです。また同封の上九一色村○○○○さんが拾ったノートには、なんらかの薬剤を作っていると思われなくもありません。

□これは江川さんの状況と、実際上少なからぬ信者が咽喉を痛めたりしたことがあると、オウム真理教を脱退する決意をした後でも言っているからです。

□また、同封の「研磨」については、最近はいった情報ですので、メモ程度ですが併せて送るものです。当面マスコミ関係はシャットアウトしていきたいと思います。

□参考のために、同封のとおり資料を送ります。薬剤の購入の関係、ノートの読み込みなどを、どちらかでしていただければと思います。

□上記、とりあえず送ります。

早 々


資料2アパーヤージャハ正悟師こと青山吉伸被告法廷にて

1997年12月12日午後1時15分から東京地裁第419号法廷

「アパーヤージャハ正悟師ー89年12月に出家。瞬く間にラージャ・ヨーガ、クンダリニー・ヨーガを成就。90年秋には、国土利用計画法違反問題に絡んで不当逮捕されるが、勾留中にマハー・ムドラーの解脱を果たす。弁護士としてオウム真理教の法律部門を担い、真理を守る偉大な到達真智運命魂として活躍中。その修行者としての並々ならぬ資質と穏やかな人柄は、すべての修行者から絶大な称賛を浴びている。(1994年3月『真理の芽』9月号から)」

処罰感情について述べます。青山被告については結論から言えば、厳重な処罰を望むものです。すこし長くなりますが、どうかお許し下さい。

松本智津夫被告については速やかに審理をとげ、死刑判決を下し、これを速やかに確定させ、刑事訴訟法475条1項に定めてあるとおり確定後6か月以内に執行するよう強く希望します。

死刑についてはこれを廃止しようとする動きがありますが、人間の素晴らしさとおぞましさを忘れた議論であり、私は反対します。なるほど、死刑には、死刑執行人の苦悩という大きな問題があり、誤判の危険性において取り返しがつかないという問題もあります。

しかし、刑罰のよってたつ基盤は何よりも応報であります。時として死刑廃止論の理由にされる「理性」というものは、刑罰の基本を理解しないものと考えます。すなわち、その基盤は「応報」という感情であり、いかに人間が理性的な存在になろうとも、必要悪として刑罰は存続すべきものです。人間に全一的な理性を求めるとき、それは人間に神になることを要求する立場です。

人間は、時に他の人、衆生を助けるために、自らを犠牲にしてまでする素晴らしい存在です。しかし同時に人間は、自らが生きるための必要性もないのに、人を殺し、人間以外の自然までも破壊します(多く忘れられているのですが人間も、人間のしている行為も自然の一部です)。人間は純粋に理性のみの存在である神になろうとしても、やはり神にはなれない哀しい生き物だと思います。その事実を忘れるのは人間として傲慢だと思います。死んだ後に審判に付せられるとか、地獄に落ちるとかを実質的な理由として死刑を廃止しようとする人もいます。冗談ではありません。最後の審判があろうとなかろうと、地獄があろうとなかろうと、現世の責任は現世でとってもらわなくてはなりません。

人間の社会においては、刑罰がなくなることは永遠になく、死刑を廃止することは誤りです。残虐に人を殺すことのおぞましさと、死刑を望む心のおぞましさを忘れないために、死刑は廃止すべきではないと思います。

死刑の執行は、人間社会において、高貴な、誇りをもつべき仕事です。誤判の危険性は事件によっては存在しますが、犯罪行為が明確な事件もあります。松本被告の裁判が遅々として進んでいない状態にありますが、これが主任弁護人が、とある懇談会でいった「典型的な死刑が予想されるケースでは結局長く裁判を継続していく以外に方法がないのではないか」という発想でされているならば、大変な問題です(1995年12月3日、「オウムに死刑を、にどう応えるか」インパクト出版会114頁)。

「人は死ぬ、必ず死ぬ、絶対死ぬ、死は避けられない」だからこそ、死刑は、本人が事故や病気で死亡する以前に、人の命を奪う刑罰として、究極の応報として必須であります。

私は、松本智津夫被告について死刑を望みます。彼もその生育歴、目の障害といった汲むべき事情はあります。しかし、そのしてきた行為は残虐な多くの殺人行為であり、無差別殺人であります。しかも、彼は彼と遇わなければ犯罪に到らなかっただろう者を手足にして殺人を犯させたのです。彼に対しては死刑を望みます。そして私は、相当程度に縁があったものとして、死刑の執行に立ち会いたいと強く希望します。嘆きながら、悲しみながら、しかし当然のこととして彼が死刑によって死ぬ場所に居たいと希望します。

その他の私の事件にかかわった人のうち、直接サリンを流した当時17歳の女性は、有罪とされながらも社会に戻れました。嬉しくって仕方がありません。彼女には何とか立ち直って大切なその命を全うしてほしいと思っています。

青山被告をのぞくその他の被告人については、適正な処罰を望みます。特に、殺人を犯した者については重い処罰を望みます。彼らは、人を死に到らしめ、苦しめたのです。被害者は現世に生きるだけで罪があるなどという発想かもしれませんが、まずもって現世に生きているのは被告人たちですから、矛盾もはなはだしいものです。

しかし、松本智津夫以外の彼らを死刑にしたいとは思いません。死刑は是非とも避けてほしいと思っています。たとえ本人が望んでも死刑にはしないで欲しいと強く希望します。オウム真理教を知れば知るほど、そのマインド・コントロールと洗脳の実態を知れば知るほど、彼らを死刑にしたくありません。オウム真理教の事件は、松本智津夫というオウム真理教における絶対者の存在と、集積されシステム化されたマインド・コントロール、そして現実感をなくさせた様々な神秘体験の経験のうえで犯された行為だからです。彼らは、絶対者松本智津夫智津夫の指示がなければ、決して残虐な事件をおこすものではなかったのです。詳細は、中川被告、遠藤被告の法廷で述べました。

しかし、青山被告は、起訴罪名からすれば死刑になる筈もありません。青山被告においては、当時弁護士であったという立場上も、マインド・コントロールだとか、洗脳だとか主張してほしくないと思っています。厳重な処罰を望みます。もちろん、青山さんにおいても、マインド・コントロールされていたことなど他の被告人と同じだと思います。その詳細は、彼と直接にじっくり話し合わなければ分かりませんが、それでも裕福な家庭に生まれ、その性格の細さに悩んだ青山さんが、「麻原彰晃尊師」の強烈な自我に幻惑されたことが理解できます。青山さんは、たまたま頭がよかったが故に、それ自体は何の価値もないエリートコースにのってしまいました。しかし、青山さんは働く人達の辛さと弱さとずるさと、そして素晴らしさを、現実感覚として感じ取ることができず、飛び込むことも結局できませんでした。自分自身のけがれも、大人になっていけばそれなりに消化し「その煩悩で自分はまずいけれど、だからこそここで人のために働こう」などと考えるものですが、青山さんも、若者にありがちなことですが、自分自身のおぞましい面はさておいてしまい、抜本的で手早い解決があるという観念に取り込まれてしまいました。

青山さんは「白い雲と青い空に囲まれていた理想の社会、子どもの頃から追い求めていた理想の社会、僕らの社会」と歌っていました。青山さんは、オウム真理教の中で熱心に修行する一人でした。彼がともに出家させた妻子がオウム真理教から離れた後、施設の中で、子どもの名前に続いて「尊師に供養します、尊師に供養します」という言葉を繰り返していたことが確認されています。おそらく、青山さんが妻子への愛情によって離れることを怖れた松本被告が、教えた言葉でしょう。

しかし、青山被告は、当時弁護士でした。弁護士は基本的人権の擁護と社会正義の実現をめざすものとされています。青山さんは、真っ向からこれに反対する行為をしました。青山さんのした事は、本件一つをとってみても、弁護士が人を殺そうとした、しかも相手方の弁護士を殺そうとしたという、日本においては勿論、世界において前代未聞の行為であり、弁護士への信頼をたとえようもなく傷つけました。

青山被告の責任は、オウム真理教事件の全体において。さらに重いものがあります。青山さんが熊本県波野村の国土法違反事件について正直に述べていれば、松本サリン・地下鉄サリンのようなことまでは起こせなかった筈です。松本サリン事件も、専属弁護士である青山さんがいなければ起きなかった筈です。地下鉄サリン事件も、あなたが事前に知っていたこと自体は争いようもない筈です。あなたは、許されざる立場にあるのです。

青山さんは、雑誌ヴァジラヤーナサッチャの発行人であることからも分かるように、オウム真理教が被害を受けているという陰謀史観を広く深く植え付け、権力との直接対決を志向するようにさせた張本人です。青山被告は、1995年1月にできた戦争部隊、新信徒庁の長官だったはずです。

いま青山さんに一番訊きたいことは、坂本事件の真相をいつ分かったか、その時どう感じたか、です。青山さんは、1989年11月4日、金沢から帰って早川らがいないことを知りそして事件を知った時、もう真相を分かっていたのではないですか。

坂本の子ども、龍彦君はもうこの世にいません。龍彦君の人生は1歳2か月で断ち切られてしまいました。龍彦君は、あの寒い土の下で6年間、一人でいました。あなたの子どもより5か月遅く、たまたま坂本の子どもとして生まれた龍彦ちゃんは、この世にいません。その責任はあなたにもあるんです。

それから、青山さんとの会話で一番覚えているのは、1994年11月4日、それは坂本が殺されて丁度5年目の私へのボツリヌス菌事件の日でした。あの日、私はあなたや林郁夫被告に2歳にもならない赤ん坊を返せと交渉しました。その午後、上九一色村富士ヶ嶺の公民館の前で、私が「集団自殺のときは大勢の人を連れ出してよ」と頼むと、あなたは「えー、集団自殺はしませんよ」と断言したのです。あなたは、サリンによる無差別殺人の意図を十分に知っていたのです。

あなたは松本被告のタントラ・ヴァジラヤーナという教えに従いました。あなたは私への事件について「結果のでないマハームドラー」なんてことを言っているそうです。嘘もいいかげんにして下さい。いったいあなた以外の誰がそんな言葉を知っていますか。オウム真理教ではもともと「ムドラーをかける」として下級の信者をいじめたり、監禁したりしてきました。ムドラーはもその結果を意欲して行動するから功徳になるという設定になっているのです。勝手に言葉を作らないで下さい。

繰り返しますが、青山さんは当時弁護士でした。弁護士は、人間の酸いも甘いもかみ分けて、仕事をしなければならない存在です。弁護士は、煩悩にまみれた人間の社会の中で、自分も煩悩に悩む存在であることを確認しつつ、すこしづつ社会正義の実現と人権の擁護に尽くす外はない存在です。弁護士であった青山さんについては、マインド・コントロールされていたなどと主張して欲しくありません。

オウム真理教には「自己の苦しみを喜びとし、他の苦しみを自己の苦しみとする」という苦の詞章があります。他の苦しみを自己の苦しみと感じるためには、つまり利他心をもつためには、現実感覚が必要です。人の痛みを現実的に感じることができなければ、利他の心など湧きようもないからです。

ところが、あなたにも、そして外のサマナたちにも現実感覚がありませんでした。あなたは坂本堤を団長とし、小野毅を事務局長として戦ってきた私たちの気持ちを理解していません。私たちが当時坂本だけを前面に出してしまった事について、どれほどの悔悟とどれほどの痛みを感じているかを考えようとしていません。あなたはあなたの友人の弁護士たちが、1990年以降、あなたに嘘をつかれ、だまされ、しかもあなたがくり返した犯罪を止められなかったことについて、どれほど辛い思いをしているか、どれほどの痛みを感じているか、どんな想いで今も弁護しているかを考えていません。あなたは坂本さちよさんの「仔山羊の詩」、江川紹子さんの「坂本弁護士一家拉致殺人事件」、村上春樹さんの「アンダーグラウンド」などを読む義務があります。利他心が抜け落ちているとき、苦の詞章は要するに「他の苦しみを自己の喜びとする」という恨みの詞章になるのです。

青山さんは、坂本に対する手紙の中で、愛と愛着心は違うと言っていました。まったくその通りです。親が支配したがるだけのとき、醜いと言う外ありません。しかし「愛」は、決して麻原さんだけを愛し麻原さんに執着することを意味しません。たとえ素晴らしい神秘体験を得ても、LSDによって宇宙全体との合一ができたと感じても、地獄の体験の中で麻原さんに救われても、麻原さんへの執着を意味することにはなりません。この言葉の本来の意味は、自らの子どもと同じように他の人を愛せ、すべての衆生を愛せということです。

しかし、あなたは、オウム真理教は、それに真っ向から反対する行為をしました。明確に矛盾しています。それはあなたが行ってきたことが善業ではなく、オウム真理教が真理ではなく、麻原さんが最終解脱者ではないことを意味します。麻原さんは、権力欲と社会への恨みと強烈な破壊願望に支配された、ただの煩悩に悩む人間でした。

青山さんは、今、表面的には、解脱というものに執着していたい風情をしています。しかし、実は下らないプライドが邪魔をしていることと、自分がしてきたことを見つめるのが怖くて怖くて、矛盾を矛盾として見つめる事ができないからです。

オウム真理教での解脱というものがあるのだとすれば、チョモランマに登る解脱ではなく、マリアナ海溝に落ちていく解脱でした。青山さんはそんな「真理」を感じ取ることを怖がっています。

ガイコツが真面目な顔してこう言った
どうせ、みんなみんなくたばって
おいらみたいになっちまうんだから
せめて命のあるあいだ
つまらぬことにウロウロしないで大事に大事に使っておくれよ。
一度しかない、おまはんの命

麻原さんは、松本智津夫42歳です。

青山さんは、青山吉伸です。


資料1 ヴァジラティッサ師こと中川智正被告法廷にて

1997年7月8日午後3時から、東京地裁425法廷

 京都府立医科大学を卒業後、大阪鉄道病院小児内科に勤務。現在オウム真理教附属医院の顧問として活躍。クンダリニー・ヨーガの成就者。

「スタッフ全員が修行者という素晴らしいヴァイブレーションのもとで、多くの患者さんが治療を受けていらっしゃいます。肉体的な健康はもちろん、心の豊かさ・魂の成熟を経験していただけるよう日夜精進しています。」 教団機関誌「新入信徒ガイドブック」より引用。

 「新入信徒ガイドブック」は坂本事件の後に作られた。『心の豊かさ・魂の成熟』と唱いながら、心の奥底でもう逃げられないと『観念』していたのか。でも、林泰男被告の証言によれば95年5月15日頃、永福アジトで「耐えられない。もうこれ以上悪業は積みたくない」と泣いていたという。(滝本)

 中川智正被告「ヴァジラティッサ」さんの法廷に証人として出頭しました。私へのサリン襲撃事件について、私の症状を聞くということで、検察側の申請でした。

が、この機会に、中川君本人と裁判所(東京地裁第15刑事部合議係)に伝えたいことがあり、下記のとおり述べました。

 『結論から言うと、中川智正被告について、厳正な処罰を望みます。しかし、死刑にはしないよう、強く望みます。

 理由は少し長くなります。
 私は、元々死刑廃止論者ではありません。むしろ何人かを残虐に殺したとき、原則として死刑にすべきものと思っています。
 中川被告は極悪非道の行為をした。
 浜口さん殺人事件、狩り假谷さん事件、多くの殺人未遂事件、松本サリン、地下鉄サリンそして八九年の坂本一家殺人事件。あなたは多くの人を殺した。多くの人を苦しませた。松本サリンで殺された七人、地下鉄サリンで殺された一二人、一人ひとりの人生があった。あなたはその命を奪い、多くの人を苦しめてきた、今も二人の人が重態のままです。
 しかも、私の事件での一件記録からも明らかなとおり、あなたはいわば遊び半分で事件を起こしたこともあります。

 あなたの手をみせて下さい。あなたはその手で多くの犯罪を犯した。あなたは、一九八九年十一月四日未明、その手で坂本龍彦ちゃんの鼻をふさいで殺した。

 龍ぼう
 おばあちゃんがお歌をうたってあげるね
 トンボのメガネは水色メガネ
 青い空をみてたから
 みてたから

 もう一つね
 メェーメェー 森の仔山羊 森の仔山羊
 仔山羊走れば小石にあたる
 あたりゃあんよがあーいたい
 そこで仔山羊はメェーと鳴く

 龍ぼう
 元気で早く帰っておいで
 おばあちゃんがだっこして
 又、何回でも何回でも
 君の大好きなこの歌
 うたってあげるから

 あなたはなぜ坂本堤を殺したんですか。なぜああも簡単に殺したんですか。坂本は、池で溺れているあなたたちを助けたいと活動していたのです。なぜ都子さんを殺したんですか。なぜその手で龍彦ちゃんを殺したんですか。なぜサリンまで作ったのですか。
 私はあなたをほんの少しも許しません。現世だけではなく、もし来世というものがあるなら、あなたの来世でも、そのまた来世でも許さない。オウムでいうならば、何カルパでも、何万カルパでもあなたを許しません。

 でもそれでも、私はあなたを死刑にしたいとは思わない。オウム真理教を知れば知るほど、そのマインド・コントロールと洗脳の実態を知れば知るほど、あなたを死刑にしたくはない。
 オウム真理教は強烈な破壊的カルトでした。破壊的カルトとは「教祖または特定の主義主張に絶対的に服従させるべく、メンバーの思考能力を停止ないし著しく減退させ、目的のためには違法行為も繰り返してする集団」を言うと思います。
 思考力を停止させるために使われたのは、マインド・コントロールと洗脳です。マインド・コントロールとは「対象者の思考能力を減退させるべく集積されシステム化された意識・思想・感情の操作手法の総体のうち洗脳を除いたもの」を言うと思います。

 松本智津夫は、[豊かな社会」で生き甲斐と現実感を失った若者を引き付ける方法を知っていました。

 第1には、自分が絶対者だと称することです。それも現世においてだけ絶対者であるというのではなく、来世そのまた来世でも、それ以外のアストラル世界とかコーザル世界と言われる世界をも乗り越えた絶対者であり、そんな「真理」を知る最終解脱者と称します。通例の神という概念よりも、より高度な存在だと主張します。この主張は、極めて魅力的なものです。人は、支配されたい欲望、時にマゾヒスティックにまで絶対的に服従してしまいたいという欲望を特つものです。この欲望を刺激されたとき、松本智津夫は強烈に魅力的な存在になります。

 第2には、様々なマインド・コントロールの手法を駆使します。松本智津夫は極めて巧妙に、さまざまな手法を集積しシステム化してきました。自己を権威化する手法、ダライラマや阿呆な知識人など外的な権威を利用し、賞賛手法、赤ずきんテクニック、催眠・暗示テクニック、フットインザドアテクニック、ローボールテクニック、人・物・時間の限定テクニック、一本釣りテクニックを使い、報恩性の原理、同調性の原理を利用し、ハルマゲドンや無間地獄などの強烈な恐怖説得、更に集団催眠の手法、秘密の共有という優越感の利用法、そしてルビコンの川手法など使いました。説明すれぱきりがありませんが、ここまでの手法が使われたとき、どんな人が松本智津夫にはまってしまってもなんら不思議はありません。

 第3には、神秘体験という魅力あるフックがありました。以前は、空気を大量に吸うことによるつまり、過換気症候群や、呼吸を止めることによる低酸素性脳症を狙って神秘体験をさせました。勿論、監禁部屋に長くいれておいて変性した意識状態にさせ、神秘体験もさせました。後にLSDや覚醒剤まで使用しました。神秘な体験は脳生理学的には説明がつきますが、体験をした本人にとっては、まさに「現実」であり、薬物と分かっている者であっても現世の方が「幻」になってしまいます。その体験をさせてくれるのが、松本智津夫であり、彼が造ったシステムなのです。

 破壊的カルトにおいては、組織は教祖のおもいのままになります。松本智津夫は、決して精神病者でも宗教家でもありません。彼は、権力欲と社会への恨みと、強烈な破壊願望という煩悩に支配された人でした。勿論誰でも、私も煩悩に悩まされる存在です。私も、松本とともに輪廻の大海に浮沈する生き物です。しかし、松本ほどに強烈な煩悩にさいなまれている人間はまずいませんでした。ですから、彼がこの煩悩を実現するためにオウム真理教を作ったとき、行き着くところは見えていました。タントラ・ヴァジラヤーナの思想は、松本の思想が凝縮されたものであり、信徒は彼の手足だったのです。

 そして中川被告のように幹部ともなれば、松本の破壊願望が伝染しているものであり、二人組精神病の二人目と類似した状態になっていたと思います。幹部は、いわば松本智津夫の手によって新しい人格をつけられ、歪んだ自己実現をはかったということになると思います。その結果、松本は、オウム真理教のメンバーの能力に応じて物理的に可能なことは、すべてできたのです。言い替えれば、松本の代わりはいないが、中川被告の代わりは、いくらでもいたのです。

 そんなあなたを、死刑にしたいとは思いません。たとえ本人が死刑を望んでも止めたいと思います。

 あなたとしては、今できることが2つあります。1つはあなたの知る限りすべての真相を明らかにすることです。たとえ元の法友に迷惑をかけようと話す義務があります。2つは、松本智津夫と自分自身について思索し尽くし、すべてを話すことです。迷う時は迷うなりに、心の動きを正直にすべてメッセージにして下さい。
 その2つによって、今も残る「尊師には深い考えがある」と誤解している現役信徒の、たとえ一人でも松本智津夫の桎梏から解き放つことができます。殺された人、苦しんでいる被害者が、少しですけれど癒されます。そしてこんな悲劇を二度と起こさない力になります。あなたも一つの命を与えられた者として、その義務があります。
 それをしたときにのみ、あなたは、ざんげし、謝罪する資格があります。つらいからといって話すことをやめてしまうとき、あなたはざんげする資格も謝罪する資格もありません。あなたは松本智津夫ではありません。あなたは、必ずや話してくれると思っています。

 以上の理由から、中川智正被告について、厳正な処罰を望みます。しかし、死刑にはしないよう、たとえ本人が望んでも死刑にはしないよう強く望みます。』      (以上)

 


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